Radwair Chronicle
"小さな予知夢"
〜Slight Foreseeing〜


□ラドウェア城ディアーナ私室

ヴァルト「はい口あけてー
     「あーん」

   口をあけるディアーナ。

ヴァルト「あいオッケー
     「ふむ
     「結論が出ました」

   もったいぶって顎に手を当てるヴァルト。

ヴァルト「カゼ
     「絶対安静」
ディアーナ「がー…ん」
コウ  「疲れが出たんだな」

   にやりとするヴァルト。心配そうなコウ。
   ディアーナ、ベッドの中でヴァルトを見上げながら眉を寄せる。

ディアーナ「まだエスターンへのお手紙半分も書いてなっ…」

   激しく咳き込むディアーナ。

ヴァルト「はい絶対安静ー
     「カゼなめんなよ?
     「扱い間違ったら死ぬよマジで」
ディアーナ「はい……」

   布団にもぐりこむディアーナ。

ディアーナ「せっかく今日はいい事がありそうな気がしたのに」
ヴァルト「いいコト?」

   ヴァルト、片眉を上げる。

ヴァルト「何それ、女王の予知?」
ディアーナ「そういうのじゃないけど…」

   ディアーナ、首をかしげる。

ヴァルト「ま、いいコトもお仕事も明日にしてゆっくり休みんさい
     「しっかり体あっためて水飲んで静かにする。オッケー?」
ディアーナ「オッケー」
ヴァルト「モリンにお薬作らせるから寝てなさいな」
ディアーナ「うん」

   部屋を出て行くヴァルトとコウ。
   布団を鼻まで上げるディアーナ。

ディアーナ(ひま…)

   目を閉じるディアーナ。

ディアーナ(早く治さなきゃ
     (みんなに迷惑かけちゃう
     (…………)



□夢の中

   一面銀世界の森。樹木に積もった雪が音を立てて落ちる。
   両手をズボンのポケットに入れて、川辺をふらふらと散策している人影(シュリアスト)。

ディアーナ(あれ
    (シュリアスト?)

   振り返るシュリアスト。しかし何事もなかったかのように歩き出す。

シュリアスト「!」

   突然、シュリアストの足が雪にはまり込む。

ディアーナ(あっ)

   雪の下の腐った枝がシュリアストの体重で折れ、体が雪に沈み込む。
   伸ばした手が空しく宙をつかみ、木の破片と共に雪の下に消える。

ディアーナ「シュリ…!」



□ディアーナ私室

   はっと目を覚ますディアーナ。荒い息。激しい心臓の音。

ディアーナ「…シュ…」
ディアーナ(うそ…)

   がばっとベッドから飛び起きる。
   あたりを見回し、ベッドから這い出る。
   椅子にかけてあったショールを羽織り、部屋を走り出る。



□ラドウェア城廊下

ディアーナ「はっ…はっ…」

   めまいがして、壁にもたれかかるディアーナ。

ディアーナ(シュリアスト
     (シュリアスト……!)

   人の話し声に敏感に立ち止まり、扉の陰に身を寄せるディアーナ。
   人々が通り過ぎた後、素早く移動する。



□ラドウェア城城門


   ショールを頭からかぶって、小走りに駆け抜けるディアーナ。
   門番たちは寒さに震えながらも他愛のない話をしている。



□市街


   ショールが頭からずり落ちるのにも構わず、全力で走るディアーナ。

ディアーナ「はぁ…はぁ…」

   白く荒い息がまとわりつく。



□森への道 遠景


   森へ向かって一直線に走るディアーナ。立ち止まり、肩で息をする。

ディアーナ(川の方…)

   よたつくが、森の奥へ迷わず走っていく。
   樹木に積もった雪が音を立てて落ちる。
   川にたどり着くディアーナ。

ディアーナ「どっち…?」
ディアーナ(足跡は……)

   狸やウサギの足跡に混じって、人間の足跡を発見する。

ディアーナ(あった!)
ディアーナ「シュリアスト…」

   上り坂。

ディアーナ「はあっ…
      「はあっ…
      「は…」
ディアーナ(いた!)
ディアーナ「シュリアッ げふっ ごふっ けふっ」

   シュリアスト、ディアーナに気づく。
   ディアーナ、涙目で顔を上げて走り寄る。

ディアーナ「シュリアスト! よかった、私さっき…」

   不意にディアーナの足元が沈み込む。はっとするディアーナ。

ディアーナ「!」
シュリアスト「ディア…」

   ショールが舞う。

シュリアスト「ディアーナ!」

   胸の位置まで雪に埋まっているディアーナ。
   穴の中、片方の靴が、さらに奥まで落ちていく。

シュリアスト(木に引っかかって助かったか…)

   注意深く駆け寄るシュリアスト。

ディアーナ「よかっ…た…」
シュリアスト「は?」

   涙目のディアーナ。

ディアーナ「私でよかった…軽いから…。シュリアストじゃなくてよかった…」

   疑問の表情のシュリアスト。
   落ちないように寝そべって両手を伸ばし、ディアーナの腕を掴んで引き上げる。

シュリアスト「靴は…」
ディアーナ「春までおあずけだね」

   片方裸足のディアーナを見やるシュリアスト。

シュリアスト「風邪を引くぞ」
ディアーナ「えへへ。もう引いてます」

   あきれるシュリアスト。ディアーナに背を向けて片膝をつく。

ディアーナ「え?」
シュリアスト「おぶる。早くしろ」
ディアーナ「でも…重いよ?」
シュリアスト「いいから」

   おずおずと背負われるディアーナ。
   そのまま城へ向かう2人。遠景。



□ディアーナ私室

   ベッドの中でにこにこしているディアーナ。

ヴァルト「で、いいコトはありましたか?」
ディアーナ「ありました」
ヴァルト「馬鹿おっしゃい。カゼ悪化させてなーにがいいコトありました、よ」

   湯飲みの盆をディアーナの前に持ってくるヴァルト。

ヴァルト「罰として昨日よりにがーいお薬」
ディアーナ「ええっ」
ヴァルト「悪いのは誰かなー?」
ディアーナ「……ごめんなさい」

   湯飲みに口をつけて、顔をしかめるディアーナ。



□シュリアスト私室

シークェイン「で」

   ベッドに寝ているシュリアスト。腕を組んでいるシークェイン。

シークェイン「なんでおまえまでカゼひいてるんだ」

   シュリアスト溜息。シークェインに背を向ける。

シュリアスト「寝る」

   ドアを勢い良く開けて登場するヴァルト。

ヴァルト「はーい、シュリっちー。にがーいお薬ですよー」
シュリアスト「寝る」
ヴァルト「寝る前に飲ーむ」
シュリアスト「寝せろ、うるさい」
ヴァルト「んじゃヴァルトくんのちゅーで治す?」
シュリアスト「ふざけるな!」

   城 遠景。


End.


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