"午前10時の呼び出しに"
〜Innocent Morning Call〜

Twitterお題メーカーより:
シュリアストが受話器越しに「…本当、お前は性質が悪いな…」と言うハッピーエンドの話を何が、あっってもかいてください。 shindanmaker.com/133918
(現代パラレル)

Trrrrrrrr....
Trrrrrrrr....
Trrrrrrrr....
Trrrrrrrr....
「……もしもし」
『もしもし、ディアーナです。おはよう』
「ああ」
 最愛の声にも関わらず彼が不機嫌を隠し得ないのは、ひとえに休日の午前中だからであった。受話器から延びるコードを手繰(たぐ)って電話を引き寄せようとするが、電源コードの短さが無情にもそれを阻む。やむなく、シュリアストはベッドから這い出して、フローリングの床の上に胡坐(あぐら)をかいた。
「何で携帯に電話しない」
 お互いに指定割の対象に入っていることもあって、今までの用件は携帯でのやりとりで済んでいた。兄と二人暮しであることも、とうに知っているはずだ。そして何より、携帯ならば枕元にある。
『家電(いえでん)なら、ちゃんと起きてくれると思って』
 ―――お見通しだった。深い溜息が漏れる。
「用は」
『お昼ごはん一緒に食べない?』
 提案自体は悪くない。実際、およそ二週に一度はそうして会っている。
 が、語尾が「食べよう?」ではなかったことと、彼女があえてこの時間に電話をしてくることには、背後に何らかの事情があると見て間違いなかった。曖昧な返事で続きを促(うなが)す。
『ディルティンが京都から来るの。11時26分に東京着だって』
 うんざりした態度を隠しもせずにシュリアストは返す。
「何でお前の従兄(いとこ)と俺が会う必要がある」
『ない?』
「ない」
『じゃあ、私とディルティンと二人だけでデートしていいの?』
「デート…」
『いいのー? していいのー?』
 受話器の向こうで、無邪気な笑みを浮かべながら左右に揺れているディアーナの姿が目に浮かぶ。
「……お前は、」
 本当に性質(たち)が悪い。
『なぁに?』
「何でもない」
『じゃあ、11時45分に銀の鈴で』
「…わかった」
 罠に絡め取られていく感を覚えながら、癪(しゃく)ではあったが嫌ではなかった。何のかんのと言いながらも、その日の終わりには、彼が控えめながら「今日は充実した一日を過ごせた」と思う程度には、ディアーナは物事をコーディネートするのが上手い。
 受話器を置いて、シュリアストは重い腰を上げ、既に抜け殻になっている兄のベッドに一瞥をくれると、眠気を洗い流すべく浴室へと足を向けた。

End.

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