お題「舞踏会とディアーナ」/「雨」

 雨を縫って弦楽器の音色が届く。階段の踊り場に、人待ち顔で庭の木々を眺める舞踏着姿がいた。
「疲れたか」
「ううん」
 振り向いて微笑んだ彼女は手を差し伸べる。
「踊ってくれる?」
「…俺とじゃ風当たりが」
「ここでいいから」
「……」
 雫と弦の合奏の中、伸べられた手を、シュリアストはそっと取った。

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