
| 何度か戦いを経てわかったことは |

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まともなのは一部の上流家だけで あとはバダーザンと大して変わらないということ |

| 裕福で誇り高いオルドーク家はもちろん違ったが |

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戦が起こるたびに 人が殺され 金品が盗まれ 女が犯され 家が焼かれる |

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おれは時々 アイガーレと共にバダーザンに出入りしては |

| 「おこぼれ」をもらっていた |

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「力の前には全てが屈服する 「俺たちはそれにただちょっと便乗するだけだ」 |

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「戦いを享受し、街を焼き、金と女を奪う 「戦とはそういうものだ」 |


| このところ寝つけないのは |

| 戦で高ぶっていたせいだけじゃなく |


| 無性に女を抱きたかった |




| 「おい」 |

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「言っとくがおれは別におまえとケンカするつもりはない 「地位とか血筋とかそんなものはくそくらえだ 「だがその気になれば、おまえを殴り殺すぐらいやってもいいんだぞ」 |



| 「…………くそっ」 |

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あいつが 何もかも知ってるような気がした それでもおれは バダーザンに出入りするのをやめなかった |

| おれは18になろうとしていた |

| 人を殺したことは まだ ない |