Radwair Chronicle
"しあわせおすそわけ"
〜Sweets with You〜
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 小さな拳が、巫女の館の扉を叩く。
 中から顔をのぞかせたのは、おっとりした印象の少女だった。
「あら。ディアーナ様?」
「こんにちは、アリューシャ。レリィいる?」
「いるわよ。ちょっと、待っててね」
「あ、まって」
 声が引き止める。引き止められて、アリューシャは振り向いた。その目の前に、皿が差し出される。
「いちごタルト。アリューシャも1こたべて」
「え? あら。ありがとう。いただきます」
「それでね、レリィにも1こあげて。はい」
「ええ。もちろん、いいけど。せっかくだから、顔あわせて行ったら…」
 最後まで聞かずに、ディアーナは館をあとに駆け出した。彼女にしてはただ事ではない慌ただしさに、アリューシャは二片のタルトを手に首をかしげる。
 
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