シークェインはさらにその先に目を走らせる。2人いた。計5人だ。
… お ま え が や っ て も い い ん だ ぞ | 「… 」 | |
突然の異国語に色めく男たちの方に向かって、シークェインはあごをしゃくる。
こ い つ ら は べ つ に お ま え と 関 係 な い だ ろ | 「 」 | |
弟は微かに反応を示したが、やはり口を開く事はなかった。シークェインは面白くもなさげに言い放つ。
や る 気 な い な ら 離 れ て ろ 。 じ ゃ ま だ | 「 。 」
「…………」 | |
口は開かずとも、異様な眼光が代わりに兄をにらみすえた。弟はきびすを返し、そのまま川べりへと下っていく。
標的の連れが丸腰で、しかも加勢する様子もないのを見て取って、男たちは彼の行く手をさえぎるでもなく、再びシークェインに注意を戻した。
「では、これを最後通告といたしましょう。その身をベルカトールに置いていただきたい」
「いやだ」
「さもなくば、せめてその腕一本でも、この地に置いて行ってもらう必要がございます」
「めんどくさいな。ごちゃごちゃぬかすな」 |
ざりっ、とシルドアラの履物が土を一歩踏みしめた。
「おれを殺すなら殺すって言え。その方が気合い入る」 |
全身から闘志を噴き出しながら、シークェインが浮かべていたのはやはり壮絶な笑みだった。
彼を囲む5人に目立った乱れはない。だが、彼らの間の空気は敏感に互いの動揺を伝えた。
風が唸った。
頭蓋を割られ、四方に血を吹き散らして、男は半ば直立姿勢のまま後ろに倒れる。
止まった世界の中心で、世界を止めた人物が、返り血も鮮やかに振り返った。
応える者はなかった。
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