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0-01 憎しみの火は点(とも)された





 
「何だその字は!」



「仮にもクローディア家の主となる者が、
「そのような事で許されると思っているのか!」



 






「……死ね!」

 


「シュリアスト!
 待て、どこへ行く!」


 
「やれやれ、また始まったよ。御館様と若様との喧嘩が」
「ガラト様も手荒いからねぇ…」



「何せ若様も難しいお年頃だ」
「親の心子知らずってやつかねぇ…」

 







 
 
「ナイヤ!」



 
「シュリアスト様」
「なにしてるの」



 
「もうすぐシュリアスト様に弟ができますよ」




「おとうと?
 ははうえがいないのに?」

「ええ」


 
「ここに……」




 






 





「ナイヤ……」


 




「ルサにいる第一子はどうなる?
 もうじき17だ」



 



「放っておけ
 ガラト様はシュリアスト様を世継ぎにとお考えだ」

「過去にナイヤ・アルティーヤを葬ったのも
 そのためだろう」


 


「ナイヤ! ナイヤ!!」




 
「……お前のためだ」



 





 
「おっと」



「若、どうなされました?」


 

「トーリヤ
「ナイヤを殺したのは父上だ!」


 
「……なぜそのように?」



「俺は
「俺は……」



 


「父上を殺す!」




 
「若!
 落ち着いて下さい!」

「ナイヤはお前の姉だろう!
 お前がやらなくても俺がやる」



 

「…失礼」




 
「もう一度言う。
 お前がやらなくても俺がやる」






 



―――館が炎に包まれたのは数時間後。



 
全焼だった。



館の主ガラトは執拗に首を切り刻まれた状態で発見され

嫡男シュリアストは行方不明。



 


「若!?
「何をなされますか!」



「止めるな!
「俺の血は汚れてる
「父上と同じ血が流れてる!」

 


「あなたがここでお命を絶たれては
 クローディア家の血筋が…」

「……
「いえ、それよりも」



リンカ様はどうなされますか」

 



 




「オルドーク家を訪ねる」

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>> 1-01 翳(かげ)る日常


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